2025年2月27日、ホノルルにて「Resilient Infrastructure Solutions from Japan」と題するセミナーを開催しました。
在ホノルル日本国総領事館とハワイの非営利団体PICHTR(国際技術研究センター)の共催で行われました。このセミナーはPaCTカンファレンスの公式プログラムの一環として行われ、日本企業がハワイにおける災害対応やエネルギーレジリエンス、インフラの持続可能性に関する取り組みを紹介しました。
このセミナーは2023年の山火事の後に実施された「Kibou for Maui」プログラムの延長線上にあります。日本の復興経験を共有し、マウイの地域づくりに活かしていくという流れの中で、今回のセミナーでは企業間の実務的な連携や今後の展望について対話を深めました。
登壇企業とテーマ
今回のパネルには、以下の5社が参加しました。
東京電力経営技術戦略研究所
電気自動車(EV)を非常用電源として活用するV2G(Vehicle to Grid)技術について紹介。2019年の台風時には実際に140台以上のEVが避難所や病院で稼働した事例を共有しました。NECアメリカ
海底ケーブルと光ファイバーを活用した災害時の通信維持・地震探知技術について。日本での実装例をもとに、ハワイでも導入可能性があると提案されました。関西電力送配電
スマートメーターとマイクログリッドを活用した分散型エネルギー管理の利点を共有。特に孤立系統であるハワイにおいては有効な手段となりうると指摘されました。日立レール(ホノルル)
ホノルル鉄道プロジェクトの現場から、非常時のバックアップ電源の構成や、パンデミック時に浮き彫りとなったサプライチェーンの課題とその対応について紹介がありました。大和ハウス工業・ファストリテイリング(ユニクロ)
マウイ島で実施された仮設住宅「カパルア・ヴィレッジ」の事例を紹介。日本式のプレハブ住宅を用いた迅速な対応が、ハワイでも十分に活かせる可能性を示しました。
会場での対話と参加者の反応
当日はPaCTカンファレンス来場者を含む約200名が登録し、官民・企業・研究機関を含む幅広い参加者が集まりました。参加後のアンケートでは、95%が「非常に有意義だった」と回答し、とくに以下の点が関心を集めました。
スマートグリッドやマイクログリッド:分散型エネルギーへの関心が非常に高く、関西電力の技術への具体的な評価も寄せられました。
EVのバックアップ電源利用:東京電力の事例に対し「ハワイでもすぐに試してみたい」といった声がありました。
業種横断的な連携:IT・エネルギー・交通・住宅といった分野を越えた対話が生まれた点について「実際のプロジェクトにどうつなげるかが今後の鍵」とのコメントがありました。
今後は、ハワイでの実証実験や政策交流、ビジネスマッチングの継続的な場づくりが予定されています。
なぜハワイで行うのか
ハワイは、日米両国にとって象徴的な場所です。日本からの移民の歴史、アメリカにおける日系社会の中心、そして再生可能エネルギーの導入を法律で進める州としての先進性。
加えて、アジアとアメリカをつなぐ地政学的な結節点であり、気候変動の影響を直接受ける太平洋島嶼の代表でもあります。
このような文脈の中で、日本企業がハワイの課題解決に向けて具体的な技術や経験を共有することは、両国にとって意義深い取り組みです。
今後に向けて
今回のセミナーは、ひとつの節目であり、次につなげていくための出発点でもあります。
実証、連携、制度設計といった次のステップに向けて、引き続き関係者の皆様と対話を続けてまいります。
ご関心・ご質問がありましたら、ぜひお知らせください。