つい先日、ハワイ州議会(Capitol)にて、州議員・行政関係者向けに開催されたブリーフィングに参加し、ハワイにおけるデュアルユース分野の取り組みについてご紹介する機会がありました。
この中で中心的に紹介されたのが、PICHTR(Pacific International Center for High Technology Research)が運営するJ-StarX「Global Growth for Dual-Use」コースです。本プログラムは、JETROと日本政府(経産省、外務省、防衛装備庁)との連携のもとで実施されており、日米・太平洋地域にまたがる社会課題の解決を目指すスタートアップ人材を対象とした育成・実証・国際連携の取り組みです。
なぜハワイなのか?
ハワイは、アメリカ合衆国の一州でありながら、アジア・太平洋に開かれた玄関口でもあります。全米最大の日系人コミュニティを有し、また米インド太平洋軍司令部(INDOPACOM)や各種連邦機関の戦略拠点でもあるこの場所は、地政学・多文化性・政策現場が交差するユニークな場です。
一方で、ハワイには非営利団体や教育機関など、国際的な連携をサポートする中立的・実践的なプレイヤーが存在しており、特定の業界や分野に偏らない形で新しい連携の実験を進められるというメリットがあります。
また、ハワイは日本と米国両方の文脈に理解が深く、カルチャーギャップの橋渡しとして非常に適した場所でもあります。
プログラム概要とその価値
J-StarXデュアルユース・コースは、単なる販路開拓プログラムではありません。
国家安全保障に関わる技術・知見の民間展開という高度なテーマに取り組む参加者にとって、このプログラムは次のような経験を提供します:
国際的な舞台での発信力・対話力の強化
英語によるピッチ、現地官民とのディスカッションなどを通じ、戦略的なコミュニケーション力が磨かれます。米国側の制度・調達・倫理観の理解
安全保障や公共調達に関する制度の違い、社会的受容性の考え方を現場から学ぶ機会です。リーダーシップ育成
多国間での協働や、異なる背景を持つ関係者との合意形成を体験することで、将来グローバルに活躍できる人材としての資質が鍛えられます。
過去の参加者からは、「単に海外展開の準備というよりも、思考の幅と視座が広がった」「政策と現場がどう交差しているかを肌で感じた」といった声も聞かれました。
現地連携と今後の展望
PICHTRとしては、今後このプログラムをより発展させ、ハワイ現地の企業や研究機関、コミュニティとの共同実証や人材交流を進めたいと考えています。気候テック、防災、インフラ、データ・セキュリティなど、さまざまな分野で日米が「共にできること」は広がっています。
特に、ハワイにおいては近年、日本の電力会社や通信・インフラ企業がEVのV2X実証やマイクログリッドの概念実験などを進めており、「島嶼×先端技術」のフィールドとして注目が高まっています。
J-StarXのようなプログラムは、こうした動きと人的ネットワークをつなぐ「ハブ」としての役割を果たしつつあります。
おわりに
J-StarX「Global Growth for Dual-Use」コースは、単なるビジネス支援ではなく、日米の次世代を担う人材が共に学び、共に社会課題に挑むためのプラットフォームです。
今年度のプログラム(第2期)はすでに完了していますが、次年度の展開や、関連イベントの情報についても今後このニュースレターで随時お伝えしていく予定です。
なお、前回のプログラムの概要はこちらの資料からご覧いただけます(PDF):
🔗 J-StarX Global Growth for Dual-Use(2024年2月開催分)
引き続き、関係者の皆さまや、これから関わっていただける皆さまとの協力の輪を広げていければ幸いです。